【第4回】RCM実施事例(石油・石油化学業界)

客先が新たに建設する設備を対象に日揮グループが実施したRCMの事例を紹介する。海外向けガス処理設備の機器に対するRCMの実施例である。対象となる機器はP&ID(Piping & Instrument Diagram)に記載された機器のうち、約3万点である。これらの機器に対し、約1年にわたり以下のような手順でRCMを実施した。

(1) 機器情報の収集
P&IDに記載された機器を、構成要素がわかる形でリストアップする。例えば、コンプレッサーは、タービンやモーター、ループオイルシステムなどに分解して、階層が分かるツリー形式で表現する。

(2) 機器の重要度決定
機器の重要度を「安全性の観点」、「生産に寄与する観点」から、リストアップした機器の重要度を決定する。「安全性の観点」からは、機器の故障が環境汚染や人災を直接的に引き起こすかどうかを検討する。「生産に寄与する観点」からは、機器の故障がすぐに施設のシャットダウンにつながるか、どのくらいの生産停止になるかを検討する。
この2つの観点から機器ごとに重要度を決定する。その機器に対して、詳細、または簡易的なRCMを実施するのか、あるいは、RCMは実施しないのかを決める。詳細なRCMの場合は、機器の各構成要素すべてに対してRCMを実施する。簡易的なRCMの場合は、主要な機器・構成要素に対してRCMを実施する。

(3) RCM実施
作業は対象となる機器に対して、FMEAの実施、故障分類、保全方式の選択の順序で行う。FMEAでは、機器の故障モードが設備に及ぼす影響を調べる。故障を、機器の通常運転時おいて、「顕在化した故障(Evident Failure)」と「隠れた故障(Hidden Failure)」に分類する。「顕在化した故障」は、機器が停止することや、測定やチェックを行うことによって、確認できる故障である。「隠れた故障」は、通常運転中の運転員が起こった故障に気がつかないような故障である。例えば、非常時に作動するガス検知システム、通常運転では稼働しないバックアップ用機器などの故障である。
次に、分類した故障をその故障原因に従ってさらに分類する。故障原因から、「初期状態での故障」、「偶発的に発生する故障」、「経年変化に伴う故障」の3つに分類する。この分類に応じて、予知保全(Predictive Maintenance)、予防保全(Preventive Maintenance)、故障探知保全(Detective Maintenance)、事後保全(Corrective Maintenance)の保全方式を選択する。ここで、故障探知保全は、故障検知ベースの保全であり、隠れた故障を見つけるために行う検査結果に基づいて実施する。例えば、ガスを使用して行うガス検知システム検査、通常は動かさないバルブのストロークテスト検査などを行い、その結果に基づいて保全を実施する。
予知保全、予防保全、事後保全の使い分けの基本的な考え方は、「初期状態での故障」と「偶発的に発生する故障」に対しては、予知保全、または事後保全を、「経年変化に伴う故障」に対しては、予知保全、事後保全、予防保全のどれかを選択する。

(4) 保全実施標準作成
定期的に実施する保全(予防保全、故障探知保全)に対し、保全の実施手順、標準的な消費時間、実施周期などを示した保全実施標準を作成する。

(5) 保全ライフサイクルコスト試算
保全実施標準を作成した機器に対し、客先指定の30年の運転期間で、保全実施に必要な人件費、材料費などを試算する。

一般的にRCMを実施するには多くの人手と時間がかかるため、この事例でも明らかなように、RCMが必要とされる機器に対して、効率よくRCMを実施する方針が採用される。

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