【第6回】PIC/S GDP 対応 で必要となるCSV その3 (前編)

【第4回】 PIC/S GDP 対応で必要となるCSV その2では、コンピュータ化システムに対するバリデーション、データ保全やセキュリティーに対する要件について説明させて頂きました。
今回の『その3』では、医薬品の流通に関わる情報システムがPIC/S GDPへの対応上、備える必要のある機能について2回に分けて説明します。

PIC/S GDPでコンピュータ化システムが備えるべき機能 (前編)

『PIC/S GDP ガイドラン』においてコンピュータ化システムの機能に関わる記述は、医薬品および医療機器を扱う在庫管理システム、販売管理システムや倉庫管理システムを対象としたものが大半を占めています。『PIC/S GDP ガイドラン』からの抜粋とその訳文を記載し、解説を加えて行きます。

3.2.4 Products pending a decision as to their disposition or products that have been removed from saleable stock should be segregated either physically or through an equivalent electronic system.
処分の決定が保留されている製品もしくは、販売可能な在庫から除かれた製品は、物理的またはそれと同等な電子システムを通すことによって隔離すること。

【解説】
『3.2 PREMISES(施設)』の章に含まれている記述であり、『出荷できない製品は販売対象の製品とは隔離して保管しなければならい』と言う施設に対する要件と電子システム(electronic system)についての要件が記述されています。ここで言う電子システムとは、医薬品等の販売管理システムや倉庫管理システムを指していると考えられ、『処分の決定が保留されている製品もしくは、販売可能な在庫から除かれた製品』とは、期限切れ製品、回収製品、不合格製品、偽造製品と出荷可能な製品であるか否かの判断中の製品のことです。
注目すべき箇所としては、“segregated either physically or through an equivalent electronic system”です。この記述によれば出荷不可製品を隔離する手段として、保管エリアを別にする等の物理的な手段とコンピュータ化システムによる出荷不可製品の混入防止が“equivalent”同等であるとされている記述です。
この記述内容に対応する為のコンピュータ化システムの機能としては以下の内容が考えられます。

  • 出荷指示時および出荷処理時の有効期限チェック機能
  • 出荷保留、出荷禁止指定機能および出荷保留、出荷禁止指定の解除機能
  • 回収品登録機能
  • 出荷処理時の出荷保留、出荷禁止チェック機能
  • 出荷指示、出荷処理、出荷保留、出荷禁止、出荷保留解除、出荷禁止解除、回収品登録等の各処理に対して監査証跡を記録する機能


4.2.9 Records must be kept either in the form of purchase/sales invoices, delivery slips, or on computer or any other form, for any transaction in medicinal products received or supplied. Records must include at least the following information: date; name of the medicinal product; quantity received, supplied; name and address of the supplier, customer, or consignee, as appropriate; and batch number , expiry date, as required by national legislation .
医薬品の受領や供給の取引は、購入/販売の請求書、納品書、コンピュータ上の記録あるいは他の如何なる形式の記録についても保管しなければならない。記録には少なくとも次の情報を含む必要がある。日付、医薬品の製品名、受領/供給量、供給者と顧客または受領者の名前と住所、国の法規によって要求される場合は製造時のバッチ番号、有効期限

【解説】
この記述は、医薬品向けの販売管理システム等で扱うデータについて記載しているものと理解できます。これらのシステムにおいては、4.2.9章に記載されているデータは当然管理されていますが、GDPに関わるコンピュータ化システムがCSVの対象となることによってこれらのデータの登録、変更、削除への『監査証跡』機能が必要になると考えられます。前回の『【第4回】 PIC/S GDP 対応で必要となるCSV その2』にて解説を行った『PIC/S GDPガイドラン』の3.5章『3.5 COMPUTERISED SYSTEMS』には『監査証跡』の必要性が明記されてはいませんが、CSV対象となるシステム上のデータを記録の原本として扱う場合には、『ER/ES指針』の適用を受けることとなります。医薬品の取引の回数に応じ増大して行く情報を紙ベースで管理していくのは限界がありますので、多くのケースではシステム上のデータを原本として扱うことになり結果的に『ER/ES指針』の適用を受けることになるものと思われます。『ER/ES指針』では情報の真正性を担保する手段として『監査証跡』機能の必要性が明記されています。


5.1 PRINCIPLE
All actions taken by wholesale distributors should ensure that the identity of the medicinal product is not lost and that the wholesale distribution of medicinal products is performed according to the information on the outer packaging. The wholesale distributor should use all means available to minimise the risk of falsified medicinal products entering the legal supply chain. All medicinal products distributed in the intended market by a wholesale distributor must be appropriately authorised by the national authorities. All key operations described below should be fully described in the quality system in appropriate documentation.
卸売業者による全ての行為は、包装に記された情報に従って行われ、医薬品の識別情報が失われないように保障すること。卸売業者は可能なあらゆる手段によって正規のサプライチェーンに偽造医薬品が混入するリスクを最小化すること。全ての医薬品は決められた市場に、担当する規制当局による必須の認可を受けた卸売業者によって流通させること。以下に記述する全ての主要な業務手順は品質保障システムの適切な文書に記述すること。

【解説】
この記述には一見するとコンピュータ化システムに関連する文言が無いように読めますが、冒頭に医薬品の包装に記載する情報についての記述が有ります。ここで言う『情報』とは医薬品の物流上の取扱いをこの『情報』に従って行うと言わしめる『情報』ですから、商品コード、有効期限、ロット番号 等を示しているものと思われます。倉庫管理システムや販売管理システム等のコンピュータ化システムとしては以下の機能が必要になるものと考えられます。

  • 『情報(商品コード、有効期限、ロット番号)』の発番
  • 『情報』の包装への印刷
  • 『情報』を含んだGS1-128バーコードの包装への印刷
  • 『情報』に基づいた出荷処理および出荷記録の登録
  • 『情報』に基づいた入荷処理および入荷記録の登録
  • 『情報』に基づいた出荷指示時および出荷処理時の有効期限チェック機能
  • 『情報』に基づいた入荷、出荷、出荷保留、出荷禁止指定機能および出荷保留、出荷禁止指定の解除機能
  • 『情報』に基づいた操作に対する監査証跡を記録保存する機能

『PIC/S GDP ガイドラン』にはバーコードについての記述は有りませんが、これらの『情報』を流通の各段階で効率的に取り扱うにはバーコードを印刷し、読み取る機能は必須であり、それらの機能についてはCSVでのバリデーションの対象となります。この『5.1 PRINCIPLE』の続きには偽造医薬品に対する対応の必要性が明記されています。その対応については『可能なあらゆる手段』とだけ記述されていて具体的な手段については言及されていません。『可能なあらゆる手段』ですので当然コンピュータ化システムでの対応も必要となるものと考えられます。製剤システムにて製品をパッケージングする際に、販売包装に『商品コード、有効期限、ロット番号』に加えて『ランダム』番号を発番して出荷管理システムや販売管理システムからデータベース登録し、包装に印字された情報から製品の真贋判定を行う等の対策がヨーロッパでは採用されています。アメリカでは『医薬品サプライチェーン安全保障法』が既に(2015年1月1日)施行されており、この法律に従って医薬品は『製品コード、有効期限、ロット番号、シリアル番号』を二次元シンボルのデータマトリックスで表示すると共にデータベースセンターに登録して、医薬品販売単位(中箱)の受け渡し、受け取りにともなう所有権移転の都度毎にデータベースに登録管理する対策が取られており、サプライチェーン全体をカバーするトレーサビリティーが担保されています。現在の我が国では薬事法による管理が行き届いており、国内で偽造医薬品が流通してしまうような事態はほとんど起きていませんが、医薬品の取引のグローバル化に伴って、医薬品の輸入/輸出が増大して行くと我が国でもヨーロッパやアメリカと同じような対策が求められるようになる可能性が有ります。

【第7回】PIC/S GDP 対応 で必要となるCSV その3 (後編)に続きます。

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